前々回・前回と扱った『子の看護等休暇』は、突発的な子の急変に対応するのが主たる目的だったが、育児期間中は普段からフルタイム勤務や残業・深夜勤務が難しい場合も多い。
こうした場合に一定の基準のもと、労働時間を制限できる規定が育児介護休業法で定められている。
『子の看護等休暇』を含めると全部で5種類になるが、それぞれ適用になる子の年齢については次のようになっている。
3才到達 小学校就学 小学4年生
▼ ▼ ▼
子の看護等休暇 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
所定労働時間外労働の禁止 ━━━━━━━━━━━━━━┛
法定報道時間外労働の制限 ━━━━━━━━━━━━━━┛
深夜労働の禁止 ━━━━━━━━━━━━━━┛
所定労働時間の短縮 ━━━━━┛
所定労働時間外労働の禁止
『所定外労働の禁止』とされることもあるが、これはあくまで『所定労働時間を超える労働はさせない』という制度であり、業務内容が制限されるものではないのでここでは多少しつこい表現だが『所定労働時間外の禁止』とした。
・ 対象は小学校就学前
『所定労働時間外労働の禁止』の対象は、小学校就学前の子を養育する労働者だ。この方から請求があった場合、所定労働時間外の労働は禁止される。たとえば所定労働時間が1日5時間なら5時間を超える労働は禁止だ。
この例外は次の方だけだ。
① 農業・水産業の方
② 管理監督者
③ 監視・断続的労働従事者
④ 高度プロフェッショナル制度の適用者
⑤ 労使協定で『対象外』と定められた
入社1年以内の方・週の所定労働日数が2日以下の方
法定労働時間外労働の制限
これも多少しつこい表現になってしまった。もともと法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える労働をさせるには36協定が必要なので、この協定が結ばれていることが話の前提となる。
前項の『所定外』と同様、小学校就学前の子を養育する労働者から請求があった場合、法定労働時間外労働を
○ 1ヶ月につき24時間
○ 1年につき150時間
に収める必要がある。ザックリ計算すると1日30程度だ。また忙しい時期は1日1時間程度時間外があっても月24時間以内に収まるが、そういう月が年6回を超えると年間基準に達する可能性が出てくる。
この例外は次の場合だ。
① 入社1年未満の方
② 週の所定労働日数が2日以下の方
この例外については『所定外』のときのような労使協定の要件はない。
深夜労働の禁止
同じく小学校就学前の子を養育する労働者から請求があった場合、深夜(22時~5時)に労働させることはできない。
この規定は次のように例外が多い。
① 入社1年未満の方
② 週の所定労働日数が2日以下の方
③ 通常、深夜に子を保育できる16歳以上の同居の家族がいる方
④ 所定労働時間がすべて深夜の時間帯の方
ここで、③『深夜に子を保育できる』同居の家族に入らないのは次の方だ。
ア. 深夜に就業している(月4回以上)
イ. 病気やケガ等で子の保育が困難
ウ. 産前産後(産前6週間・産後8週間)にあたる
ア~ウのどれにも当てはまらない方はすべて『深夜に子を保育できる』方とみなされるので、一般的にはその子に16才の高校生の兄弟がいても『深夜労働の禁止は不可』ということになる。
所定労働時間の短縮(育児短時間勤務)
所定労働時間の短縮(育児短時間勤務)とは、3才に満たない子を養育する労働者から請求があった場合、所定労働時間を1日6時間まで短縮できる規定だ。
この規定の例外は次の通り。
① 農業・水産業の方
② 管理監督者
③ 監視・断続的労働従事者
④ 高度プロフェッショナル制度の適用者
⑤ 労使協定で対象外と定められた
入社1年未満の方・週の所定労働日数が2日以下の方
⑥ 1日の所定労働時間が6時間以下の方
⑦ 業務の性質・実施体制上、適用が困難と認められる業務に従事する方
①~⑤は冒頭の『所定労働時間外労働の禁止』の場合と同じだ。また⑥は6時間にしても短縮にならないので当然だろう。
⑦の『業務の性質・実施体制上、適用が困難と認められる業務』とは、法令には書かれていないが、指針では次の業務が例示されている。
・ 『育児短時間勤務』が困難な業務とは
ア. 国際線の客室乗務員
イ. 少人数の事業所で、その業務に従事できる労働者が著しく少ない場合
ウ. 流れ作業・交替制勤務による製造業務で、シフトに短時間勤務者を組込み難い業務
エ. 個人ごとの担当業務・地域等が厳密に分担され、代替困難な営業業務