育児休業には、取得できる回数に制限がある。子が1才未満のときには2回まで。保育所待機などで1才以降も認められたときはその後6ヶ月ごとに1回ずつだ。
これらは労基法と同じ最低基準なので、会社が認めた場合には取得可能だが、育児休業給付金は国の(雇用保険の)制度なので、基準に沿った休業でなければ支給されない。ここでは育児休業給付金の回数制限を中心に考える。
育児休業給付金について、原則の回数を超えても例外的に支給になる場合がある。
3回目でも育児休業給付金支給!の場合
同じ子について3回目の育児休業になると、基本的に育児休業給付金は支給されない。ただし、この原則を押し通すと『それはいくら何でも理不尽じゃないの?』という場面も出てくるので、その場合は3回目以降でも例外的に育児休業給付金が支給される。
例外的に回数制限を免れるのは次のような場合だ。もちろん断り書きがない限り、子が1才未満の場合に限る。
① 育休中断の原因となった休業が、対象者の死亡等で終了した
これは、別の産休・育休・介護休業の開始によって育児休業を終了(中断)したが、その休業が対象者の死亡等で終了した場合だ。
別の休業を開始するともとの育児休業は終了する。その『もとの育児休業』が2回目であれば、原則としては3回目はない。
しかしたとえば育児休業中に他の家族介護が必要になって『介護休業』に切替えたが、その対象となる家族が介護休業終了を待たずに死亡してしまったような場合は、もう1回育児休業に戻った場合は、給付金も支給しましょうというものだ。
これは、終了(中断)前に取っていた育児休業が、延長(₂₂₅.育児休業(給付金受給)期間の延長)によって子の1才6ヶ月または2才までの休業になっていた場合を含む。
② 配偶者の死亡・負傷・離婚等で子の養育ができなくなった
これは、育休申出対象の1才未満の子を養育する配偶者が、死亡・負傷・婚姻の解消等でその子と同居しなくなったことにより養育できなくなった場合だ。
『1才未満の子を養育する配偶者』限定だが、この配偶者と子が上記の理由で同居できなくなった・しなくなったことにより、当初育児休業を取得していた方が再び育児休業せざるを得なくなった場合が該当する。
③ 子が傷病等で2週間以上世話が必要になった
育児休業の申出対象である1才未満の子が、負傷・疾病等で2週間以上世話を必要とする常態になった場合がこれに当たる。
『1才未満』の子であれば負傷・疾病でなくても世話を必要とするのが普通だが、これは2回目の育児休業を終了していた方が、この事情によってもう1度育児休業をせざるを得ない状況になった場合だ。
④ 1才未満で、保育所が利用できない
育児休業の申出対象である1才未満の子について、保育所等での保育を希望し、申込みを行っているが、当面保育が実施されない場合だ。
これは、配偶者や父母・義父・義母等、子を養育してくれる人がいたので2回目の育児休業を終了したところ、その後にその条件がなくなり保育所での保育を希望したがかなわなかった…というような場面が想定される。
1才以上の待機児童の場合と違い、この場合は細かな要件はない。
⑤ 育児休業中の出向や出向解除で引き続き育児休業
これは、2025年4月から新たに加わった例外事由で、
育児休業中に出向(または出向解除)になった雇用保険の被保険者が、1日の空白もなく被保険者資格を取得し、引き続き育児休業する場合だ。
《なんだ、当たり前じゃないの?》と思う方がいるかもしれないので少し説明する。
○ 転職前後の育児休業は別物
育児休業給付金は雇用保険の制度だ。この雇用保険は適用事業所ごとに適用される。従って、転職の際は本人の雇用保険の適用先が変わることになる。
そこで育児休業中に転職する場合は、転職前の育児休業と転職後の育児休業は全くの別物として扱うことになる。
だから、ある事業所で2回目の育児休業中に転職すると、新しい勤務先におけるそれ以後の育児休業は3回目ということになり、育児休業給付金は支給されなくなる。これが原則だ。
もちろん転職は本人の意思でするものなのでやむを得ないといえるし、最初から育児休業中の方を新規採用する事業所も、相当の度量かよほどの事情があるはずと思われて当然だろう。
ただし、育児休業中の出向や出向解除で適用事業所が変わるのは主に企業側の事情だ。
こうしたことを考慮し、育児休業中の方が『出向によって』3回目の育児休業となってしまう場合は、3回目も育児休業給付金を出しましょうということになったものだ。
1才以降の夫婦交替
子の1才以降の延長の要件に当てはまることを前提として、夫婦で育児休業を交替する場合は、次の要件を満たせば、1才~1才6ヶ月・1才6ヶ月~2才の各期間に夫婦それぞれ1回ずつ育児休業給付金の対象になる。
○ 本人または配偶者が、子が1才*¹に達する日に育児休業をしていて、かつ、①or②の場合
① 新たな育児休業の初日が、子が1才6ヶ月*²に達する日の翌日
② 配偶者が、子が1才*¹に達する日後に育児休業していて、
本人の育児休業期間と離れていない
※ *¹ 1才 ➡ 1才6ヶ月 ・ *² 1才6ヶ月 ➡ 2才 の場合も同じ
これは、典型的には夫婦の育児休業交替だが、必ずしも交替でなく一定期間夫婦ともに休業している期間があってもいい。ただし、夫婦いずれも育児休業していない空白期間が1日でもあれば、その後はダメだ。