派遣労働者を含めて従業員が10人以上の場合は『(安全)衛生推進者』の選任が必要になる。
『安全』をカッコ書きにするのは、『安全衛生推進者』が必要になるのは特定の業種で、それ以外は『衛生推進者』になるからだ。
このページでは、『安全衛生推進者』と『衛生推進者』を両方指す場合に『(安全)衛生推進者』と書くことにする。
安全衛生推進者が必要になる『特定の業種』
『特定の業種』というとかなり限定されるイメージがあるが、次のように、安全衛生推進者の選任が必要になる『特定の業種』は多岐にわたる。
① 運送業
② 各種商品・家具・建具・じゅう器等の卸売業
③ ガス業
④ 機械修理業
⑤ 建設業
⑥ 鉱業
⑦ 各種商品・家具・建具・じゅう器燃料の小売業
⑧ ゴルフ場業
⑨ 自動車修理業
⑩ 水道業
⑪ 清掃業
⑫ 製造業
⑬ 通信業
⑭ 電気業
⑮ 熱供給業
⑯ 旅館業
⑰ 林業
ちなみに今回は扱わないが50人以上になると、さらに専門的な資格等を要する『安全管理者』や『衛生管理者』の選任が必要になってくる。
表にまとめると、選任が必要になるのは次のようになる。
派遣労働者を含む従業員数 | 『特定の業種』 | 得意の業種以外 |
---|---|---|
10人~49人 | 安全衛生推進者 | 衛生推進者 |
50人以上 | 安全管理者と衛生管理者 | 衛生管理者 |
・ 派遣労働者も含む
何度も書いたが、事業所に派遣中の労働者がいるときは、それらの人数は派遣先の事業所の従業員人数に含める。
ついでにこの表でいうと50人以上の『安全管理者』だけは派遣元の会社の人数に含めないが、それ以外はすべて『派遣元』の人数にも含めて算定する。つまり、派遣元・派遣先の2か所でそれぞれダブってカウントすることになる。
(安全)衛生推進者の要件
(安全)衛生推進者の選任に関する基準として、次のいずれかの方の中から選ばなければならないことになっている。
① (安全)衛生推進者講習を修了した者
② 大学・高専卒業者で、その後1年以上(安全)衛生の実務に従事した者
③ 高等学校卒業者で、その後3年以上(安全)衛生の実務に従事した者
④ 5年以上(安全)衛生の実務に従事した者
⑤ 安全管理者・衛生管理者・労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタント
つまり②~⑤に該当する方がいない場合は①の(安全)衛生推進者講習を受講するしか選択肢はない。ただし、この講習は都道府県労働局長の登録を受けたものでなければならない。
・ 原則は、事業場専属の者だが…
(安全)衛生推進者は、その事業場に専属の者から選任しなければならないのが原則だ。ただし、次の方を選任する場合は事業場外の方であってもいいことになっている。
○ 労働安全コンサルタント
○ 労働衛生コンサルタント
○ 厚生労働大臣が定める者
・ 派遣労働者でも可
また、派遣労働者は派遣先の実数に入ることもあり、上記の要件を満たす方であれば、派遣労働者自身が派遣先(安全)衛生推進者となることは可能だ。
もちろん派遣労働者に限った話ではないが、(安全)衛生推進者には以下に示すような業務があるので、推進者に選任するからにはそれらの業務を滞りなく行えるだけの権限が与えられていなければならないのは言うまでもない。
(安全)衛生推進者の業務
(安全)衛生推進者の業務は『総括安全衛生管理者が統括管理する業務(衛生推進者は衛生に係る業務)』とされている。
いきなり出てきた『総括安全衛生管理者』とは、最低でも100人以上の事業所でなければ選任義務はないので、基本、(安全)衛生推進者を選任する規模の事業所に『総括安全衛生管理者』がいることはない。
ここでは、(安全)衛生推進者の業務内容は『総括安全衛生管理者』が統括管理する業務と同じだというわけだ。よく分からなくてもなかなか重要な業務だということは分かる。
ただ、これだと訳が分からないので厚労省のQ&Aによると、(安全)衛生推進者の業務は次の通りとされている。
① 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること
② 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること
③ 健康診断の実施その他の健康の保持増進のための措置に関すること
④ 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること
等
『等』とは何かというと、上で書いた『総括安全衛生管理者』の統括管理する業務としては他に
⑤ 安全衛生に関する方針の表明に関すること
⑥ (安衛法に定める)危険性又は有害性の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること
⑦ 安全衛生に関する評価の作成、実施及び改善に関すること
というのがあるので、こういう場合も(安全)衛生推進者の業務といえる。
ただし『衛生推進者』については、このうち衛生に係る業務に限る。
従業員への周知は必須
(安全)衛生推進者の選任は、事由が発生(従業員が10人以上になった・従業員10~49人の事業所を開設したなど)から14日以内となっているが、特にこれを監督官庁等に報告する義務はない。
ただし、選任した(安全)衛生推進者の氏名を事業所の見やすい場所に掲示するなど、関係労働者に周知する義務がある。