今回取り上げるのが『高年齢者雇用等推進者』で、一般事業主に関しては選任は努力義務となっている。
高年齢者雇用等推進者の業務
高年齢者雇用等推進者について、高年齢者雇用安定法11条は次のように定める。
事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、高年齢者雇用確保措置等*¹を推進するため、作業施設の改善その他の諸条件の整備を図るための業務を担当する者を選任するように努めなければならない。
ここでその『業務を担当する者』が高年齢者雇用等推進者なので、要は、高年齢者雇用確保措置等を推進するための仕事が高年齢者雇用等推進者の業務ということになる。
*¹ 高年齢者雇用確保措置等
ここで『高年齢者雇用確保措置等』とは、高年齢者雇用安定法で定める高年齢者雇用確保措置と高年齢者就業確保措置(後述)まとめたものをいう。
従業員31人以上の事業主に毎年1回提出が義務付けられている『高齢者雇用状況等報告書』には、高年齢者雇用等推進者を記入する欄があるので、選任している場合はここに役職・氏名を記入する。
高年齢者雇用安定法
高年齢者雇用等推進者の根拠となっている高年齢者雇用安定法は正式名称『高年齢者等の雇用の安定等に関する法律』という。
この法律の目的は第1条ではっきり
・ 定年の引上げ、継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進
・ 高年齢者等の再就職の促進
・ 定年退職者その他の高年齢退職者に対する就業の機会の確保
(等の総合的措置により)
高年齢者等の職業の安定その他の福祉の増進を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。
と規定されているので、その内容もだいたい予想できる。
ただ、ここであまり触れることのない目的条文をくどくど引用した理由はそれだけではなくて、『高年齢者』と『高年齢者等』がきちんと使い分けられていることに着目してもらいたいからだ。
45才は『高年齢者等』
高年齢者雇用安定法上、『高年齢者』とは55才以上の方をいう。さらに45才以上になると『中高年齢者』の範疇に入り、45才以上の方をまとめて『高年齢者等』ということになる。
45才は一般的にはアラフィフにも入らないようで、職業人なら現役バリバリで脂の乗り切った方が多いだろう。女性なら率としては少ないが出産する方もいる(45才以上の出産者は、2019年で全出産者の0.18%)。
こういった方々を『高年齢者等』のワクに入れるのは多少気の毒な気もするが、この法律上は自動的に『高年齢者等』の仲間入りだ。
上の目的条文でこの『高年齢者等』が対象になっているのは『再就職の促進』で、ここでは深入りしないが、45才以上の方が解雇等で離職する場合、希望者に対して『求職活動支援書』の交付を義務付けるなど、特別の規制がある。
『高年齢者』に対する義務
55才以上の(『等』のつかない)『高年齢者』に対しては、たとえば次の措置を講ずることが義務づけられている。これらの措置のための業務が、『高年齢者雇用等推進者』の、より具体的な仕事内容になる。
・ 高年齢者雇用確保措置
65才未満の定年を設けている事業主は、次のいずれかの措置を講ずること。
ア. 定年の引上げ
イ. 継続雇用制度(希望者の定年後の雇用制度
ウ . 定年の廃止
定年については第8条で原則『60才を下回ることができない』ことになっているので、60~64才が定年の場合ということになる。
こうした企業の多くが取り入れている『継続雇用制度』は、特殊関係事業主(その事業主の経営を実質的に支配できる事業主)による雇用の確保も含まれる。企業グループ間を通して継続雇用を確保しているような場合だ。
なお、労使協定により継続雇用制度の対象者を限定できる制度は2013年に廃止され、2013年までに結んだ労使協定で限定対象となる年齢も段階的に引き上げられ、2025年4月以降は対象者はいなくなった。
・ 高年齢者就業確保措置
65才以上70才未満の定年を設けている事業主は、70才までの安定した雇用を確保するよう務めなければならない。
ここで挙げられている内容は、65才未満の場合と全く同じ(上記ア~ウ)なので省略するが、65才以上の場合は努力義務となっている。
この努力義務も、過半数労働組合または労働者代表との同意による『創業支援等措置*²』により就業を確保する場合は課されない。
*² 創業支援等措置
創業支援等措置とは、事業開始を希望する高年齢労働者との間で業務委託契約を結び、これによって就業を確保する措置などをいう。