₁₂₃.減給の制裁には限度額がある



平均賃金を使うとき⑤・減給の制裁とは

 
 『減給の制裁』というのは従業員に対する懲戒の一種で、必ず就業規則等(以下『就業規則』とする。)に基づく根拠が必要ということになっている。
 

・ 人事考課による降給は別

 
 『減給』は、給与が減ること全般を指すこともある。
 そういった広い意味では、就業規則にのっとった人事考課の結果として基本給や職務関連の手当が減額され、結果的に給与が減ることも『減給』のうちということになるが、これは単なる人事考課の結果なので制裁ではない。一般に『降給』とされ、『減給の制裁』とは別問題だ。

 たとえこのときの人事『考課』の要素として期間中の不祥事が含まれていて、その不祥事があったときに何らかの懲戒処分(『減給の制裁』を含む。)を受けていたとしても、これは『二重罰』にはならない。
 

・ 欠勤控除とも無関係

 
 当Blogの読者の方は大丈夫だと思うが、たまに『1時間半遅刻したから1時間半分給与減額』というのも減給だと思っている方がいる。もちろんこれはノーワークノーペイの原則からくる当然の欠勤控除で、減給の制裁との関係はない。

 もちろん、ここで1時間半の遅刻なのに2時間分の給与を減額したら、30分に相当する給与不払いとなり、1発アウトの違法行為だ。

 逆に中小企業の場合だと、入社半年前で年休を付与されていない方とか年休を使い切った方が正当な理由・やむを得ない事情で事前に連絡の上遅刻した場合など、給与を減額しないで済ませてやるということもあるようだが、基本的にはここは減額(欠勤控除)するところだ。
 

減給の制裁は、就業規則上の根拠が必要

 
 これに対して減給の制裁は、懲戒の1つとして、働いたのにその分の給与を払わないということになるので、誰もが納得する根拠が必要というのは当然だ。

 就業規則にどんな懲戒を規定するかは会社の判断だが、参考として厚労省の『モデル就業規則』を見ると、

① けん責   始末書を提出させて将来を戒める。
② 減給    始末書を提出させて減給する。(以下、労基法の限度額を記載)
③ 出勤停止  始末書を提出させるほか  日間を限度として出勤を停止し、
        その間の賃金は支給しない。
④ 懲戒解雇  予告期間を設けることなく即時に解雇する。
        (以下、監督署の認定による予告手当不支給について記載)

の4種が記載されている。これに降格・諭旨解雇などの規定が加わっている会社が多い。この『モデル就業規則』では、①けん責・②減給・③出勤停止の対象として、

・ 正当な理由なく無断欠勤  日に及ぶとき。
・ 正当な理由なくしばしば欠勤・遅刻・早退をしたとき。
・ 過失により会社に損害を与えたとき。
・ 素行不良で社内の秩序及び風紀を乱したとき。
  (以下、就業規則上の服務規律違反等を記載)

が挙げられている。『モデル就業規則』はあくまでモデルなのでこれに必要以上にとらわれることはないが、この場合で言えば厚労省としてどのような行為にどの程度の制裁を加えるのが妥当と考えているのかの目安にはなる。

 ちなみに他の場面でも、法令・通達・解釈として明文化されているもの以外について、厚労省の方向性を知る機会にもなるので、経営者の方は一読しておいて損はない。
 

『減給の制裁』にも限度が

 
 これらの1つとして『減給の制裁』があるのだが、正当な根拠があっても支払うべき給与を減らすというのは従業員の生活に大きく影響するので、この金額にはかなり厳しい限度が定められている。次の条文だ。

『就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。』(労働基準法第91条)

 何度か触れたが『労働基準法』ということは労働者が対象なので、取締役等の役員の場合は『6ヶ月間50%減俸』というようなのもあり得る。
 

・ 1回につき平均賃金の半額

 
 平均賃金は元々日額なので、わざわざ『一日分の』とあるのは、労基法の親切心というところか。

 とりあえず、何をやらかしたのか分からないが、月影さんが4月に減給の制裁を受けた場合、平均賃金が9,295円68銭なので、

9295.68円 ÷ 2 ≒ 4,648円

となるので、1回4,648円が、減給の制裁の限度額となる。
 

・ 総額の限度は月額給与の10分の1

 
 ここで、1回あたりの減給の限度は平均賃金が基準だが、複数の減給がある場合の総額の限度は、その期に支払われる(はずの)給与総額が基準となることには注意が必要だ。平均賃金の1ヶ月分が基準になるわけではない。

 ということで、一賃金支払期における減給の総額の限度については平均賃金の話題からは外れるが、減給の話題は今後もそうないと思うので、一応書いておく。

 この月、月影さんの給与総額が残業分を含め274,658円になるはずだとすれば、

274,658円 × 1/10 ≒ 27,465円

となるので、1回4,648円の減給を月に6回受けると27,888円で、この限度を超える。
 この場合は、この月の減給の総額は限度額の27,465円とし、差額の423円は翌月に繰越すことはできる。
 結局、この場合に支払われる給与は

274,658円 ー 27,465円 = 247,193円

になる。

 

次 ー ₁₂₄.欠勤・減給がある月の、制裁の限度 ー

 

※ 訂正
『減給の制裁』にも限度が
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平均賃金を使うとき⑤・減給の制裁 '24.03.13

2024年02月27日