98.半日年休は半分でなくても可?



半日をどう決めるか



 年次有給休暇は、まとまった日数の休暇を与え、労働者の心身の疲労回復・労働力の維持培養を図ることを目的としている。ということは、1日未満の休暇はその趣旨にそぐわないことになる。労働基準法も、半日年休については何も言っていない。

 しかし、労働者のニーズもあり、従業員の希望があり使用者がこれを認めた場合は、半日年休を認めることになった。
 労基法上の記述はないので、半日年休についても、何をもって半日とするかについては法律上の基準はない

 所定労働時間8時間(9:00~18:00)・休憩 12:30~13:30 とすると、普通、次の3つの分け方が考えられる。

① 午前と午後で分ける   9:00~12:00(3時間) と12:00~18:00(5時間)
② 勤務時間の半分で分ける 9:00~14:00(4時間) と14:00~18:00(4時間)
③ 昼休みで分ける     9:00~12:30(3時間半)と13:30~18:00(4時間半)
 

① 午前と午後で分ける

9:00 ~ 12:00 と 12:00 ~ 18:00

 ①は、単純に午前と午後で分けたものだ。『97.深夜勤務の年休は2日分?』で述べたように、『1日年休』の1日は原則として暦日を指すため、暦日を半分に割った午前と午後を『半日』とすべきという説もあり、理論的にはこれが一番『由緒正しい』分け方と言えるかもしれない。

 同じ『半日』でも午前が3時間・午後が5時間というのは不公平では?と思う方もいるだろう。
 この場合、不公平『感』はあるかもしれないが、『93.シフト勤務者の年休取得の運用』で触れた場合と同様で、どちらの『半日』を取るかは従業員次第なので、従業員間の不公平にはならない。

 とは言っても、半日年休の取得がどちらかに集中してくれば、業務への支障は考えられる。
 特に、これでいくと飲食店などで10時~19時(休憩15時~16時)なら午前2時間・午後6時間となるし、牧場などで6時~16時(休憩12時~14時)の場合だと、逆に『半日』が午前に偏る。ここまでくるとさすがに偏りすぎだろう。

 業種によっては勤務時間が午前または午後のみで、分けようがない場合も考えられる。そうした場合は、この方法は不可能だ。
 

② 勤務時間の半分で分ける

9:00 ~ 14:00 と 14:00 ~ 18:00

 午前と午後に同じ半日年休を取った場合に免除される労働時間に差があるのは納得できないということで、休憩を除いた所定労働時間を真っ二つに割ったものが②だ。
 これだと、前半・後半の物理的な勤務時間の差はなくなる。

 ただ、①の場合にも言えることだが、この場合、後半に年休を取ったときには9時から12時半まで勤務し、(必要もないのに)1時間休憩を取った後に30分だけ働いて14時に帰ることになるので、この休憩がわずらわしくなるかもしれない。

 一斉休憩の縛りがない事業所で、労使の合意があれば、本来の休憩時間12時半から13時まで働いて帰り、『半日年休』と扱うような弾力的運用は可能だ。もちろん一斉休憩の原則が適用される事業所なら労使協定が必要になる。

 ②『勤務時間の半分で分ける』方法は、所定労働時間が1日の前半・後半いずれに偏っていても対応できるという点で、どんな時間帯の就労形態でも採用しやすいとは言える。

 所定労働時間が5・6時間あるいはそれ未満といった短時間労働の場合、または日によって所定労働時間が異なる場合でも、『半日』の規定の仕方が簡単で、納得感が得られやすいというのも利点と言っていいだろう。
 

③ 昼休みで分ける

9:00 ~ 12:30 と 13:30 ~ 18:00

 ③は、休憩時間を境にしたもので、こうしたごく普通の勤務様態なら、この3つの中では一番根拠薄弱ではあるが、使い勝手は一番いいだろう。①や②のように、休憩時間によって隔てられた半端な勤務時間もなくなる。

 この例だと、勤務時間の半分4時間と比べて、前半は30分短く後半は30分長くなるが、これによって後半に請求が集中するほどの違いではない(とは思うが、こればかりはやってみないと分からない。)。
 

半日年休の注意点

 
 ここで、半日年休についての留意点をいくつか書いておく。
 

・ 半日年休を認める義務はない

 大体、どこの職場でも半日年休というのはあるようなので、認めなければならないと思っている方もいるかもしれないが、冒頭に書いたように、基本は1日年休であって、半日年休はあくまで例外だ。

 従業員の希望があっても、半日年休を認めるかどうかは最終的には会社の判断ということになる。
 

・ 中抜けや遅出早帰りはダメ

 『半日』にいくら基準がないとはいえ、いわゆる中抜けや、遅刻・早退を合わせて『半日』とするなどは、年休の趣旨を損なうので認められない。
 

・ 取得義務『年5日間』にも算入

 半日年休は、(実際の時間に関わらず)『0.5日の年休を取った』とカウントされるので、半日年休を2回取れば、1日年休を1回取ったことになる。
 『取得義務』の趣旨からはかけ離れるので推奨はしないが、従業員の希望で半日年休を10回取っていれば、法律上はそれだけで年5日の取得義務はすでに果たしたことになる。
 

半ドンの日の年休は1日?半日?

 
 半日年休を取り入れている会社からたまに出される疑問は、週44時間の特例事業の場合に多いのだが、土曜日など元々半ドン(午前中のみ)の日に終日年休を取ったとき、『1日』とみなすか『半日』とみなすかということだ。中には疑問どころか当然のごとく半日年休としているところもあるようだ。

 基本的には、その日の所定労働時間の長短に関わらず、1日(1暦日)年休を取ったら『1日年休』となる。『半ドン』の日も例外ではない。大体、半日年休のない会社なら、1日年休にしかなりようがない。

 それでは所定労働時間が8時間の日でも4時間の日でも同じ『1日年休』となって不公平ではないかという疑問は当然想定できるが、何度か述べたように、年次有給休暇の取得は原則として労働者の任意なので、あえて土曜日に年休を取る以上、その不利を承知で取るものとみなされる。

 もちろん、『半日年休』が認められた事業所で半ドンの日の年休を『半日年休』とすることは、労働者に有利なので、会社としてそういう運用をするのは一向に構わない

 

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※ 修正
半ドンの日の年休は1日?半日? 12行目
これを『半日』とみなす ➡ 半ドンの日の年休を『半日年休』とする  '23.11.21

 

2023年11月14日