₁₂₂.休業補償に休日はない



休業補償と休業手当

 
 前回見たように災害補償の1つ休業補償について、労基法は『平均賃金の6割』という最低限度を定めている。不可抗力以外の理由で休業したときに支払う『休業手当』と同じ日額だ。

 ここで、《休業手当と同じなら大したことはないな…》とナメてかかってはいけない。休業手当との大きな違いは、

① 『休日分も支払義務がある』ということと、
② 『支払いがいつまで続くか分からない』ことだ。
 

会社休日も補償義務

 
 休業手当は事業所が『会社都合』で休業したときにその日の分の給与を保障するもの。その事業所の休業日には元々給与が支払われないのだから、休日分の保障をしなくていいのはある意味当たり前だ。

 対して休業補償は、その事業所が休みだろうが出勤日だろうが、1年365日分を毎日支払わなければならない。つまり、事業所の休日分についても補償義務を履行しなければならない。これは法律上、次のように規定されていることとも関係がある。
 

・ 補償を受ける権利は退職しても変わらない

 
『補償を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない』(労基法83条)

 ここで退職についてだが、ー ₁₁₇.平均賃金を使うとき①・解雇予告手当 ー で書いたように『業務上の負傷・疾病により療養のため休業する期間』(及びその後30日間)は当然解雇はできない。

 ということは解雇以外の自己都合や定年退職・有期雇用の『雇用契約期間満了による退職』等で退職となるのは問題ない。
 もちろん『有期雇用』とは名ばかりで、ほとんどの方が当たり前に契約更新しているような場合は、一方的に雇い止めすると解雇と同視されることがあるが、これは別の問題だ。

 こうした自己都合退職・定年退職・(本当の)雇用契約期間満了による退職などの場合、事業所と本人の雇用契約上の関係は途切れるが、災害補償についての権利・義務関係はそのまま残る。

 要は、補償義務はその方が現にその事業所に在籍しているかどうかには無関係に存在する。つまり、その事業所が休みかどうかなどには配慮しない

 これは、学生が、単発アルバイトに1日だけの予定で行った事業所でたまたま労災にあった場合などを考えれば分かりやすい。その方に休業補償するのに、その事業所の休日など何の関係もないのは明白だろう。
 

休業補償の終わりは誰にも分からない

 
 次に『支払はいつまで続くのか』だ。休業補償はいつまでする必要があるのか。
 労働基準法の『休業補償』の規定をもう1度示す。

『使用者は、前条の規定(療養補償)による
① 療養のため、
② 労働することができないために
③ 賃金を受けない
場合において、使用者は、
労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。』

 いつまでとは書かれていないので、①~③の要件をすべて満たしている限り、いつまでもしなければならない。休業手当は稼働再開すれば終わるが、休業補償はそういうわけにはいかないのだ。ここで①~③を順に考える。
 

① 療養のため、

 
 まず、療養中であることが必要だ。療養中ということは治癒していない。治癒(症状固定含む)していれば、その後障害が残れば労基法では一時金の『障害補償』に移行する。

 ここで労災保険の場合は、1年半たっても治癒しない状態で症状が重いときは『傷病補償年金』に移ることになるが、労基法の災害補償でこれに相当するものはない。
 

② 労働することができないために

 
 いわゆる『労務不能』の状態だ。ここでの『労務不能』はケガをしたとき従事していた『労務』とは限らず、一般的に労働できない状態をいう。この点は健康保険の『傷病手当金』の要件としての『労務不能』の判断よりは厳しく、軽労働でも仕事ができるのなら『労務不能』ではない。
 

③ 賃金を受けない

 
 業務災害の療養による労務不能の日について賃金を支払うというのは無関係の事業所ならあり得ないだろうが、災害が起きた事業所なら、責任上部分的に賃金を支払うこともあるだろう。

 この『賃金を受けない』場合とは、賃金を『全く受けない』ケースだけでなく『平均賃金の60%未満しか受けない』場合も含む。労基法の災害補償の場合ならどちらも事業主の持ち出しで『出所は一緒』なので、この辺が問題になることはないだろう。これについては労災保険のところでもう1度触れようと思う。
 

・ 打切補償の制度はあるが…

 
 前回⑥で示したように『療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病が治らない場合においては、使用者は、平均賃金の1200日分の打切補償を行い、その後は労働基準法の規定による補償を行わなくてもよい』という規定もあることはある。

 ただ、労災保険適用外の事業所(個人・5人未満の一定の業種)の一般的財政規模を考えれば、この時点(3年後)までに疲弊してしまっていることも考えられる。

 ちょっと考えても、3年分(1095日)の災害補償というと、休業補償だけでも普通に1000万円を超えるだろうし、療養費にしても、もしずっと入院だった場合3年間でいくらかかるものか想像もつかない。10割負担で、高額療養費制度などというしゃれたものもないのだ。
 

任意加入がお勧め

 
 ということで、労災保険に加入義務がない事業所であっても、任意加入手続きはしておいた方がいい。ここで、労災保険加入が任意の事業所はすべて雇用保険も任意だが、労災保険は、雇用保険と比べるといざというときの保険給付のケタが違う

 労災保険の保険料は、支払った給与に対して次のようになっていて、小売・サービス・事務仕事などに比べれば安くはないが、これはそれだけ労災の発生率が高いことを示している。ちなみに国営なので、任意加入だからといって割高になるとかいうことはない。

農業    1.3%
林業    5.2%
海面漁業  1.7%

 

次 ー ₁₂₃.減給の制裁には限度額がある ー 

 

訂正
・補償を受ける権利は退職しても変わらない 1行目
とされていることとも関係がある ➡ カット

※ 労災保険料率変更  '24.03.29

 

 

2024年02月20日